知らんジジイ
中3の修学旅行の夜。今から30年前の話である。
関東地方の片田舎に住んでいたわたしたちの学校は、日光方面を巡ってから近隣のホテルに泊まるという、極めてオーソドックスなコースをまわり、夕飯と風呂の後、少しの自由時間を楽しむべく仲の良い友達数人とロビーで駄弁っていた。
あまりはっきりは思い出せないが、ロビーにいた同級生はそんなに多くはなく、ヤンキー系の派手な奴らは多分部屋であーだこーだしてたのだろう、割と大人しめの女子ばかりだった気がする。
ロビーのソファに座り喋っていた私たち(多分3人だったと思うのだけど)に不意に近づく人物がいた。
それは浴衣を着た風呂上がりと思しき知らんジジイであった。
知らんジジイは私たちに話しかけてきた。
「君たちの指導者に会いたいのだが」
?
突然よくわからんことを言われ動きが止まる私たち。
「君たちの態度があまりに酷いんでね、指導者の顔が見てみたいと思って」
??
ますます不可解な私たち。
何故なら、そのジジイが言ってることが、全く見当違いだったからだ。
例えば、ロビーで中学生が大声で猥談を繰り広げ大騒ぎしていたら、そりゃまずいだろう。
しかし私たちは普通にソファに座り話していただけで、大声だしたり、走り回ったりはしていなかったはず。
いや、もしかしたらソファを占領していたのが気に食わなかった?!
…まあ思いつくことがそれくらいしかなかったので、このジジイは単にイチャモンつけてきてるだけだなと判断したわたしは
「じゃあ先生呼んできますんで」とだけ言って職員の部屋へ行った。もちろん謝ってなどいない。
友だちも戸惑いつつ付いてきてくれた。
職員の部屋に行くと、学年主任の山さん(アラフィフの男性)が浴衣で大の字でイビキをかいて寝ていた。
(今思うと既に一杯ひっかけてたんじゃねぇかな…と考えられる)
「先生、先生」
気持ち良さげに寝ていた山さんに声をかけるとびっくりしたように飛び起きた。
「今ロビーで知らないおじさんに、お前らの指導者の顔が見たいと言われたので呼びに来ました」
言われた事をそのまま伝えると、山さんはすぐにロビーに向かった。
ロビーにいたそのジジイと山さんがソファに座り話しているのを、山さんの後ろ側から見守る私たち。
声は良く聞こえなかったが、ジジイが山さんに
「自由?そういうのは自由とは違うだろ!」
などと明らかにお前の方が違うだろ、というような言葉の揚げ足を取るだけのことを言われていて、数分前までは気持ちよく寝てたのに、かわいそうにな…と思った。
その後、部屋に戻った私たちの所に山さんがきてくれて(私たちが山さんの部屋に行ったのかもしれない)、
「別に迷惑かけるようなことはお前たちは何もしてないから、気にするな」と言っていた。
私たちもそうだよね?!そんなうるさくなかったよね!?と後から湧いてきたジジイに対する怒りを露わにしていた。
その中に何故か過去記事でも登場した(https://erxiio.hatenablog.com/entry/2019/02/07/001711)生徒会長のカジがいて(唯一男子)、ロビーにいた当事者でもないのに神妙な顔立ちをしていたのが意味がわからなかった。
わたしは怒りがよくわからん方に向いて何故かやたら嫌みったらしい言い回しでそのジジイの悪口を言い続けていた気がする。
その一方で友だちが
「せっかくの修学旅行なのに台無しよ!」
と言って泣き出すと、その部屋にいた他の友だちも泣き出してしまい、泣きながらヒートアップして何か言った友だちに対しカジがよくわからんけどキレそうになるという、カオスな状況になっていた。
(何度も言うがカジはその時に関しては完全なる部外者であり、女子の所に勝手に来て勝手にキレる意味は今考えても全くわからない。余計。いらんことすんな)
わたしはあーあ、という気持ちで友だちが泣き止むまでその場を見守るしかなかった。
多分ここまでで1時間弱くらいの時間だったと思うのだが、その後またロビーを通ると、一時消えていた同級生たちもまたロビーで寛いでいた。
そこにさっきの知らんジジイが、何事もなかったかのように通り過ぎていった。
いや、あえて知らん顔をしながら、わざわざロビーを通ったように見えた。
そして時は流れ今2020年。
Twitterでポテサラくらい作れジジイの話題を見かけて、わたしは確信した。
みんな!
こういうジジイは!!
ただの!!!
難癖野郎で!!!!
言いやすい相手に!!!!!
絡みたいだけの!!!!!!
孤独な人間だから!!!
言われる筋合いでないこと言われたら!!!
全力で気にするな〜〜〜!!!!!
…だって、アイツらこっちがどんなに普通にしてたって重箱の隅つつくように言いがかりつけてくるんだもん。
「注意を促す」ことが目的でなくて「相手を凹ませる」のが目的なんだからさ。
絡まれたら何も言わず無視して
「…あ〜これ、相手になんとかマウントとって凹ませようとしてくる、残念な歳の取り方した方の人間だわ…」
という目線をそいつに送りつつ立ち去るのが良いのでは。
平成初期にも存在したそういう知らんジジイは、令和初期にも存在するんなら、これからもいなくなることは無いと思うから、せいぜい自分がそういう歳の取り方をしないように気をつけていこうと思う。
そしてこういう年寄りに絡まれたら
「ああ…アレね」
くらいの気持ちでスルーできるよう、悪い歳の取り方をした人の事が社会に広まっていけばいいんですわ。ええ。