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浄化してしまいたい

思い出したくない嫌〜なエピソードをネタにして浄化する

露出狂

なんだか世間が痴漢の話題で盛り上がっているようで、それ系ツイートを眺めていたら思い出したことがある。

 

それは10年ほど前(30代中盤)、新卒で入った仕事の特別なイベントある日の朝だった。

 

わたしはいつもより早い電車に乗るべく、徒歩10分強の駅までの道のりをiPodを聴きながら一人歩いていた。

朝7時台だった。

いつもと違い、スーツにヒール。ヒールが苦手なわたしは駅に着くのに時間がかかるのを見越して出勤時間よりかなり余裕を持って家を出ていた。

駅までの道は住宅街で、割と高級な邸宅が並ぶエリアだったので、素敵なお宅を見ながら歩くのは嫌いではなかった。

通り慣れた道と1本違う道を行ってみようと、軽自動車が1台ギリギリ通れるか通れないかくらいの細い道を入り、しばらく歩くと不意に隣に自転車に乗った長髪の男性が現れた。

イヤホンをしていたわたしは隣に来るまで全く気付かなかったので、ギョッとしたが、無言でこちらの顔を見てくる男性の顔を不審に思いつつ見返していたら、ようやく事態が理解できた。

 

そいつは下半身を出ししごきまくっていたのだ。

 

 

 

 

「テメェ何してんだゴラァァァァァぁぁぁ!!!」

 

頭に血が上る前にわたしは喉が出せる限りの声で怒鳴っていた。

 

「フザケンナごの野郎がああああああああああ」

 

当然逃げる男。

怒鳴りながら追いかけるわたし。

 

「待ちやがれこのクソ野郎がぁぁぁぁぁぁ」

 

「テメェ警察に突き出したるからなぁぁぁあ」

 

当然追いつく事も出来ず肩で息をしながら110番をした。

 

「警察です。事件ですか、事故ですか」

「たった今、露出狂に遭いました。長髪に黒髪、黒いスーツ、大声を出したら自転車で逃げました」

「場所はわかりますか」

「〇〇駅に向かう途中の〇〇の辺りです、今その人が遠くに見えてます」

「わかりました。すぐに向かいますが、あなたはそこで待っていることはできますか?」

「大切な仕事がありそれはできません」

「では、連絡先を聞いてもよろしいでしょうか」

 

電話を切った時には遠くで見ていたそいつも見当たらなくなった。

 

かわりに、すぐ前のお宅からわたしの罵声を聞いて何事かと思ったおばさまが心配そうに出てきて、どうしたの?と声をかけてきた。

「自転車に乗った露出狂が出たんです。警察には通報済みです。お騒がせしてすいません、どうか気をつけてくださいね!」

 

あらそうなの…大変だったわね…と声をかけてくれたおばさまに会釈をして駅へ向かったが、とりあえずこの時点で不審者に思われても仕方ないのは朝っぱらから怒号をあげていたわたしの方だっただろう。近隣の方々には申し訳ないことをした。

 

職場に着いてからは同僚の皆にすぐさまこの話をした。

「どんな人だったんですか?」

「長髪、黒髪、黒スーツの小さい平井堅みてぇな奴だった」

「…それ、平井ケンジだったんじゃないですか?」

…いや、多分平井ケンジではないな…

と思っていたら、携帯に着信があった。

 

警察からだった。

「先ほど通報頂いた方と思しき方を確保したのですが、確認に来ることはできますか?」

「…申し訳ありません、今から大事な仕事があり、携帯も出ることが出来なくなってしまいます」

「そうですか…」

 

 

その後、小さい平井ケンジがどうなったかはわからない。

 

だがひとことだけ言うならば、

 

「命拾いしたな、小さい平井ケンジよぉ」

 

…というところだろうか…。