痴漢 2
片道2時間の距離を通っていた大学時代。
そのうち約1時間半が電車内であり、その中で数回ほど遭遇した痴漢についての話の続きである。
ある平日の午後。その日は部活などもなく、割と早めの時間に電車に乗り、ボックス席の窓側に一人で座ることができた。
ぼーっとしながら外の景色を見ていると、途中でわたしの正面に座ってきた男性がいた。
「すいません、すいません」
小さな声で頭を下げながら座りに来る男性は、小太りで割と頭薄めのおっさんだったような気がする。
とりあえずわたしはそのおっさんの邪魔にならないように姿勢を正したが、ボックス席の斜め対角線上に座ればゆったりできるのにな、とちょっと不思議に思っていた。
座るなり目を瞑り居眠りを始めるおっさん。
わたしは相変わらずぼーっとしながら座っていたのだが…
しばらくして脚に違和感を覚えた。
何故か、目の前で寝ているおっさんが私の両脚を自分の両脚で挟んできたのだ。
は?
文字にすると意味がわからないと思うけど、その時も意味がわからなかった。
違和感に気付いたわたしが、脚をどかそうとするが、居眠りしているおっさんの脚の力が強くなかなかどかせない。というか抜けない。
焦る中、なんとか挟まれていた脚から逃れ、ボックス席の真後ろにある、二人掛け席(電車の真ん中を向いてる席ね)に座り直しなんだったんだ今の…とぐるぐる考えていた。
その直後、
居眠りしていたはずのおっさんが席を立ち、キョロキョロしはじめ、二人掛け席のわたしを見つけ「チッ」と舌打ちをした。
そこで初めてそのおっさんが痴漢だったのだと気付いた。
おっさんはそれ以上絡むことなく、降りていったので良かったけど、さすがに結構怖かった、訳わかんなくて。
その話を後日たまたま会った高校時代の男友達に話したところ、
「へー、感じた?」
とニヤニヤしながら言われ、話の通じなさにショックを受けるという二次被害(?)を被った。
ちなみに同じ男友達に電車内で露出狂に遭ってブチ切れた話をしたら
「そんなの勝手じゃんよ」
と露出狂の方に肩入れするようなことを言われさらに話が通じないことに絶望し話を変えた覚えがある。
断っておくがこの男友達は決して悪い奴ではなく至って普通の人間である。
今思い出すととんでもねぇ女下げクソ野郎みてえだが、恐らく普段から軽口を叩き合い真面目な話をしてこなかったわたしとの接し方を鑑みて、こういうコミュニケーションの仕方になったのだと推測する。
(それを差し引いても有り得ないけどな!!)
あれから25年近くたった今、時代も変わりやっと女性たちが声を上げはじめたけれど、未だに痴漢の話は男性に話してもやはり通じなかったりするのだろうか?
あの時、わたしは男友達になんて言って欲しかったんだろう?
今となっては痴漢に遭うことは全くないが、もし被害に遭った人を見かける事があれば、何とかして助けてあげたい。
そう思うだけだ。
そして痴漢のハゲデブおっさんだけが1億パーセント悪いのになんか男友達の方がやな奴みたいになっちゃってるのも二次被害だな、ほんとに。
痴漢は被害者だけでなく、世の中の男性にも間接的に害を及ぼしていることに、常識的な男性たちはもっと怒ってもいいと思うのだが。
※痴漢は男性だけでないことや男性の被害者も存在することは理解しておりますので悪しからず。