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浄化してしまいたい

思い出したくない嫌〜なエピソードをネタにして浄化する

木下

進学校だったはずなのに高校時代に勉強した覚えがなく、なんとか引っかかった大学はいわゆるFランと呼ばれるレベルであった。

 

とある宗教系大学ということもあり、悪い人たちではないけれど何となく全体的に垢抜けない、ダサい学生が多かった気がする(わたしも例外ではない)。

 

そんな所ではあったが、わたしなりにせっかく入った大学で、やりたいと思ったことは全部やろう!と決めており、体育会系のスポーツ部、学園祭実行委員会、コーラス部にアルバイトと、勉強する暇もないほど忙しくしていた。

 

が、恋愛だけはしなかった。(というか、お声がかからなかった)

 

そんな毎日を過ごし1年が経った頃。新入生が入ってきたのだが、その中の一人が木下だった。

 

わたしのいた学部はとある資格が取れるのだが、その資格を取るには珍しく共学であり、女子7:男子3くらいの割合で、学部内の学年を超えての交流も多かった。

その学部にいる男子はなんというかその、いい奴なんだけど垢抜けないというか、頼りないというか、そういう連中ばかり(ちなみに女子は派手すぎず地味すぎず至って普通の子達だった)。

 

そんな中、木下はガタイが良く当時大人気だったとあるサッカー選手に似ていると言われていて、なのにだいぶフレンドリーだったのでなかなか目立つ存在の人気者だった。

 

そいつはわたしの従兄弟の先輩にあたり、名前だけは知っていたので、こちらから声をかけるとすぐに打ち解け、会えば楽しく話すくらいには仲良くなった(が、いきなり呼び捨てのタメ口なのは気になったが)。

 

そんな木下と、半日一緒に行動することになった日があった。理由は思い出せないが、多分隙間時間とかだったのだろう。

 

都内某所を歩き、ケンタッキーでお茶をした時に、2つついてきたチキンを「これ食べたら?」と言ってひとつ分けたのは覚えている。

 

そのあと、わたしの前を歩きながら、木下はこうつぶやいた。

 

「…江口が可愛かったらなー…」

 

は?

なにそれ?

どゆこと?

 

そのことには特に触れずそのまま次の場所に移動したのだが、その後だんだん腹が立ってきた。

 

「可愛かったら」何なんだよ。

そのあとに続くのは「付き合うのに」か?

ていうか、わたしはテメェのことなんざ何とも思ってねぇし!

つーかなんで上から目線なんだよ!!

 

この文章で伝わるかはわからないが、この時の奴の態度はいわゆる「俺様」系だった。

でもアレって、自分に好意を持っている女に対して取る行動なんじゃないの?! 

 

わたしは自分の容姿に未だに自信がなく、太っていることをイジられるのは日常茶飯事だったし、それを売りにしていたところがある。

だけど、ここまではっきりと「可愛いくない」と言われたことはなかった。

しかも、告白もしてないのに振られたような形で!

 

 

しかし今思うと木下はわかりやすく調子に乗っていただけの、中身スッカスカお山の大将野郎だったんだろう…

わたしも含め、奴のようなタイプが珍しく写った周囲の人間が無意識にチヤホヤしてしまったんだろうね、きっと。

 

その後奴は他大学の歳上彼女が出来たが、その彼女を妊娠させてしまい、中絶費用を先輩に借りたらしい。この頃には奴の化けの皮は剥がれ、学内では奴のことを良く言う人は居なくなった。

 

卒業してから、わたしの就職先に意気揚々と入ってきたが、同僚の華やかなお姉さん方は奴の本質を見抜いており誰からもチヤホヤはされていなかった。そしていつのまにか奴は居なくなっていたが、してはいけない相手といわゆる不倫関係になり即効クビになったことを知ったのは少し後の話である。

 

それからはたま〜に見かける機会はあったが特に話もせず、最終的にはメジャーではない宗教にハマったとかはまらないとか風の噂で聞いたけど真偽の程は定かではない。

 

でもわたしは未だに従兄弟に木下の大学の時のことを話せないでいる。

 

話す必要もないとは思うけど、「高校の頃学校を仕切っていた」(木下談)先輩がこれだけの失態を犯すなんて、聞きたくないだろうしね、きっと。