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浄化してしまいたい

思い出したくない嫌〜なエピソードをネタにして浄化する

経験不問

新卒で入った職場を13年勤めてから辞めた。

理由としては、一生この職場にいることはできないし、わたしのすぐ下の同僚は5歳以上下で、なんとなく居づらくなってきていたのが大きかった。

年齢のわりにしっかりしていない自分に対し気遣ってくれる優秀な後輩たちばかりだったが、情けなさは常に感じていて、純粋に鈍感で天然な馬鹿だったらずっと続けられたと思うけど、鈍感だが気がついちゃうし馬鹿だけど天然じゃないわたしはこれ以上は無理と思って辞めたのだ。

 

だがアラフォーの一人暮らしはさすがにヤバい。失業保険が貰えるギリギリまでは好きなことをしてゆっくり過ごしたが、ハローワーク通いの中で一般企業で経験不問の所を探しては書類を送り続ける毎日だった。

 

(前職が専門職だったが、違う仕事をしてみたいと思っていたのだ)

 

そんな中、隣の駅に本社のある会社から面接に来てくださいとの連絡が入った。

特にその職種に興味があった訳じゃないけど、とにかく経験不問だったから応募しただけだった。

 

会社を訪れると、中に通され、椅子を勧められた。

わたしより少し上かなと思われる女性が面接官だった。

 

「江口さんは前職は〇〇だったようですね。その他にやってきた仕事は?」

「特にはないです」

「?この業界、関わりがあったとか?」

「ありません」

「??未経験なのに応募してきたの?」

「はい」

 

…明らかに不服そうな面接官。多分溜息ついてた。

 

「…結果は後日ご連絡しますので」

 

…無理なやつだろそれ。わたしでもわかるわ。

 

っていうか…

 

書いてあったよね。経験不問って。

 

 

その時は何も言えなかったけど、経験不問、初心者大歓迎、って書いたなら書類通したそっちが問題だろがい!!手間とらせんなや!お互い一つも得しないだろうが!!!

 

そう思えるようになったのは実は最近で、同じような体験をした方のブログ記事をいくつか読んで、結構こういうことあるんだなと思ったからである。

 

10年近く前の話だから今はどうなのかわからないが、経験不問と書いたからには本当にそういう人間が来るのは当たり前だぞということを声を大にして言いたい。

 

「経験不問とのことでしたので新しい職種にチャレンジしてみたく応募させて頂いたのですが、どうやらお呼びでなかったようですね、時間の無駄ですので帰らせて頂きます。履歴書の返却をお願いします、あと、ど素人に来て欲しくなければ経験不問などと書かないでくださいね、時間の無駄なんで」

 

…こう言って帰ってやりたかったわ…。

 

「ラストレター」

今回は映画の感想を。

40代のわたしが学生時代、今から25年近く前に観た「ラブレター」の、続編では決してないが、姉妹のような作品「ラストレター」。

 

中山美穂主演の「ラブレター」は、確か「スワロウテイル」と二本立てでやっていたのを観て、本命じゃなかったのにすごく感動し原作も後から読んだし、岩井俊二監督の映画もレンタルして観たものだ。

 

その頃のファン層を狙ったであろう「ラストレター」、案の定わたしを含め40代オーバーの女性が圧倒的に多かった。

 

映画やライブを観た後に語り合いたいタイプのわたしだが、生憎一人で行くことばかりなので、ネタバレにならない程度に感想を吐き出していきたい。

 

まず、出演者が豪華の一言。「ラブレター」のファンであれば「あっ」と思うような方が、チョイ役(でもないか…)で主演していた。

 

主役は広瀬すず松たか子福山雅治なんだけど、福山雅治が役作りなのかそうじゃないのかわからないが、初登場がすごく「ヘタレなおっさん」でびっくりした。あそこまでオーラって消せるのか…役者すげぇな…

 

で、「ラブレター」でも感じたんだけど、主人公の高校生時代役の俳優が現代の俳優と似ても似つかなくて、その辺りは相変わらず違和感があった、でも後半、福山雅治と高校時代役の神木隆之介が似ているように見えた瞬間があったのが不思議だった(神木隆之介福山雅治に見えたのではなく、福山雅治神木隆之介の面影があったようにわたしは見えた)。

 

美しい映像と美しい物語だけど、実は青春の残酷さを秘めていて、ネタバレになるから詳しくは書かないが、高校時代のシーンでは少し涙が出てしまった。

 

主役になる人間の周りには必ず引き立てる人間がいる。

美しく儚い人はそれだけで伝説になってしまうし、他人の人生すら変える力を持っている。

 

わたしは圧倒的に引き立て役であり、決して物語の主人公にはなれないタイプだということを思い出し、少し辛くなってしまった…

 

ドラマや映画を観る時、感情移入しすぎてしまうきらいがあるのだが、松たか子の高校時代の役(名前知らない…)には感の情が移の入してしまい切なかった…切なかったよッッッ…!!

 

だけど松たか子がすごく可愛くてハッピーで、なんていうか救われたし、ともすれば胸糞案件でこれから悪いこと起きそう、みたいな不安の種をきっちり掘り返してくれたような気がした。

 

そして。やはり人は生きてこそ、と改めて感じた。

 

美しい人は若くして召されると伝説になる。

 

…でもそれだけだ。

 

主人公になれなくても、美しくなくても、選ばれなくても、生きていた方が絶対にいい。

 

そんなことを思った映画であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カナミちゃん

新卒で就職した職場の同期はわたしを含め6名ほどいた。

 

仕事柄女子ばかりだったが、皆都会育ちだったり、良い家のお嬢さまだったりと、垢抜けている印象だった(わたしと違って)。

 

その中にカナミちゃんという子がいた。

 

第一印象はよく喋る子だな〜と思っていただけでちょっと苦手なタイプだった。

(ちなみに同期の中ではわたしの次に顔面偏差値は高くなかった。ほかの同期の子たちがべっぴん揃いだっただけだと思いたいが…)

 

何が苦手って、喋る内容がどうも下品なんだよね。彼氏と別れた話とか聞いてもいないのにこと細かにガンガン話してくるし、その次に出会った男性に自分から迫って無事ゲットした内容も同期みんなに事細かに報告してくれるけど、いやに生々しくてわたしは引き気味だった。

 

(観覧車の中だかで自分からキスして「もうあなたでいいわ!」と言ったとかなんとか。しらんがな)

 

でも悪い人ではないし、基本真面目な職場だったので、アラサーの歳までみんなで仲良く働いていた。

 

カナミちゃんは事あるごとに、良い男性をゲットして早く結婚したいと言っていて、周りのみんなも食傷気味だった。そして人の恋バナも大好物で根掘り葉掘り聞いてくる。

 

(もっともわたしには浮いた話などなかったんだけども)

 

その様が実際の年齢以上に見えたし、ブランドバッグやブランド服を身につけオシャレにもしていたのに、いまいち上品に見えなかったのが、自ら女を落としてるようでなんか勿体なかった。

 

しかしカナミちゃんは、私から見たら痩せてはいないまでも太ってはいない部類に入ると思うのだが、何故か他の先輩方からは「カナミちゃんと江口さんって入社当時見分けつかなかった」と後から言っていたのを聞いたので、実はあまり大差なかったのかもしれない。

 

 

そんなこんなで隙あらば恋愛トークと下世話な話ばかりしていたカナミちゃんだったが、ついに結婚が決まった。

 

嬉々として結婚式場の見学やら、両家顔合わせの話をふーん凄いねーと真顔で聞いていたがカナミちゃんはこちらの反応なんて目に入っていなかったので常に嬉しそうだった。

 

んで、同期のよしみで結婚式で余興を頼まれた。5人であれこれ話し合い(こういうのは割とノリノリで楽しめるメンバーだった)、当日は笑いから涙を誘う良い余興ができ、私たちとしてはやり切った感があった。

 

(その上何故か私は二次会の司会まで頼まれて何度か打ち合わせもしたし当日もなかなか忙しく動き回っていた)

 

カナミちゃんも披露宴〜二次会まで無事に終わり感謝してくれていたようだ。

 

 

その年の年度末。

 

「ちょっとちょっと」と、ニヤニヤしながらわたしを人気のないところに呼び出しカナミちゃんはこう言った。

 

「私、今年度で仕事やめることにしたから。子どもも欲しいしね〜」

まあそうなるだろうなとは薄々感じていたので

「あ〜そうなんだ。でも丁度いいタイミングかもしれないね」

 

 

「江口もそろそろ将来のこと考えた方がいいよ」

 

…わたしが返事を言い切らないうちにカナミちゃんはこう言ってのけて、ニヤニヤしながらじゃあね〜と消えていった。

 

 

一方的に「言い逃げ」されたわたしはポカーンである。

 

今の言葉でいえば「マウントを取られた」ということなるんだろう。

 

ポカーンの後にワンテンポ置いてムカついてきたわたしは、2個上の美人先輩(えれえ美人だけど性格キツい)に思いっきり愚痴ると

「はあ?!何でアンタにそんな事言われなきゃいけないんだよ!って話だよね!!」

と共感してくれたので少しスッキリしたけど、カナミちゃんはわたし以外にはこんなこと言わないんだろうなと思うとやはりモヤモヤは消えなかった。

 

その後、仕事で振袖を着る機会のあったカナミちゃんが、昼食時に弁当を囲みながらはしゃいでいつもの如く盛り上がっていた時に、

 

「え〜ソースがはねると振袖が汚れるから開けられな〜い、江口〜このソース開けて〜」

 

とかほざきやがって(この時振袖を着ていたのはカナミちゃんたち5人くらいで他はわたし含めスーツだった)、流石にこの時は一瞬で頭に血がのぼり例の如く感情の全てを表情に出したわたしを見兼ねた1個上の先輩が

「あ…あたし開けるよ…」

と咄嗟に手伝ってくれて(この方にとってカナミちゃんは後輩)凍りつきかけた空気を溶かしてくれようとしたのに

 

「他にもソース開けて欲しい人居たら言って!わたし開けるから!」

 

…と結局ソースいっこも開けてないわたしが同じ表情で言い放ちアナ雪かってくらいその場を凍らせたこともあった。

 

そんなこんなでサシで会うことはないけどその後も同期で会う関係は続いており、

(急にランチ行こ〜と連絡きて3人で会ったら案の定妊娠報告だったり)

このマウントを取りたがる姿勢のブレなさに逆に感心してしまうほどである。

 

現在二人のお子さんに恵まれ普通に家族を支えているらしい。

 

わたしが結婚もせずその会社を13年勤めてから辞め、一般の(ブラック)会社で働いていた時はしきりに

「江口にはそれが似合ってるよ」

と言っていた。

 

 

…とかなんとか言ったって、あんたの仕打ちは忘れた訳じゃねぇからな?!おおぅ?!

 

こうして出汁が無くなるまでしつこくネタにするのが、わたしのストレス解消法です☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

義実家の公衆便所よりきったねえ便所掃除をキレながらした年末

昨年の、というか一昨日のことである。

 

旦那実家の近くに住みつつ、なかなか足が向かない理由としてその家が掃除をしない家だからということがある。

 

旦那実家には旦那の父と祖母がおり、母はよく知らんが旦那が学生の頃に離婚したらしい。

 

炊事などは祖母が数年前まではやっていたらしいが、高齢の為現在は寝たきりに近い状態になっており、台所に立てなくなったので台所は荒れ放題、しかし今思えば祖母が元気だった頃ですら物を溜め込んだり、腐らせたりしていたのだろうと思われる。

 

結婚して間もない頃。正月過ぎに行った時、

祖母に「甘酒煮たから飲んでいきなさいよ」と言われ(別に飲みたくなかったが)鍋を開けるとカビの生えた液体があった。

見ないふりをしてその日は帰ったが、その次に行った時(数日後)、鍋はそのままの状態で放置されていた。

それでも尚甘酒を勧めてくる祖母に「なんか、カビ生えてて…」とやんわり伝えたが「ええ?そうなの?」と言ったきり。

更に数日後尋ねるとやはりそのまま鍋はそこにあった。

わたしは無言で中身を捨て鍋を洗った。

 

この頃から祖母はボケ始めていたのかもしれないが、年齢的に無理もない。

 

だが義父は別にまだボケていないはずだ。

 

でも義父は台所のことも掃除も満足にしない人間だった。いや、できない人間なのかもしれない。

 

寝たきりの祖母の枕元のゴミ入れはいつも満杯で周りには髪の毛やら薬のゴミが落ちていたし、トイレはテンションが下がるほど汚く、公衆便所の方がまだマシと思える程だった。

 

子どもが3歳になり、訪ねるたびにおやつをくれようとするが、祖母の枕元にいつもあるみたらし団子の賞味期限を確かめてからでないと与えるわけにいかなかったし、食べる気でいた子どもにカビが生えた団子を勧めていたので慌てて止めて、じゃあ仏壇の前に置いてある頂き物のお菓子を食べなさいよと言われるもそれらのカステラやらどら焼きやらも大抵月単位で賞味期限が切れていてわたしもキレた。

 

なんで食べもしないお菓子をずっと置いておくのだ!!(余談だが賞味期限が3年前の彩果の宝石も発見した。※ゼリー状の個包装されたお菓子。よく見ると謎の亀裂が入っていて怖かった)

 

子どもと一緒に行った時に最も困ったのはトイレである。

保育園に通っている息子は小用は立ってできるようになり、出先のトイレにも一人で入る事はあるが、身長がまだ低くどうしても立っておしっこをするとチンチンが便器についてしまう。

 

公衆便所より汚い義実家の便器は縁や便座の裏は無法地帯で、子どもの大事なところが触れて病気になったらどうしようとハラハラしていた。(子どもも流石に汚さに引いており、あまりトイレに入ろうともしなかったが)

 

そんなことを周りの人達に愚痴っていたのだが、年寄りの家では当たり前のようにあることらしい。

歳をとるのはこういうことなんだと。

だから仕方ないんだと。

 

そうですか。

 

…だからってなんでわたしがやんなきゃなんねんだよ!?!

 

わたしがやんなきゃ、誰もやらねえからだよっっ!!!

 

ここからがやっと一昨日の話に入る。

 

便所の汚さや台所の無法地帯に気付かない奴らに許可を取る必要はない。

 

家からサンポールと便器用ブラシとお掃除シートを持参し、旦那と子どもと義実家へ向かった。

 

便所は相変わらず汚い。掃除前の状態を見た旦那が引いていたが無言で掃除に取り掛かる。

便器中より外側が特に汚れていて、お掃除シートで拭き取ると茶色い汚れがついた。お掃除シートを1パック、置いてあったスプレーも全部使い切り、何とか便器とその周りを綺麗にした。

 

「…けいちゃん(息子)にこのトイレ使わせたくなかったんだよね」

掃除後につぶやくと旦那は

「…お疲れ様」

と言ってギュッとわたしを抱きしめたが、それをスルーし無表情で庭に出てこんどは無言でスコップで穴を掘り始めた。

ある程度掘ったところで

「スイカ取って」

旦那に伝える。

「絶対に落とさないでね」

 

いつからあるかわからない仏壇の前に置いてあったスイカ

義父は置いとけ、割れたらどーするんだとかほざいてやがったけど構わずその穴にスイカを埋めた。子どもが喜んで土をかけていた。

 

これまた数年前、みかんが送られてきたとかでお裾分けしてもらったが、3ヶ月後くらいに廊下に置いてあったみかんの段ボールの底が腐っていてわたしが一人で片付けたことがあった。(りんごの箱も片付けた気がする)

(長芋も)

 

頂いたんだか買ったんだかわからないが、元来食いしん坊のわたしは食べ物を無駄にするこの家の在り方が許せなかった。

祖母が元気だった頃はお節やらを大量に作っては食べきれずに腐らせる。

送られてきた野菜やら果物をさばききれず、駄目にしてしまう。

ある年は生卵が大量に冷蔵庫にあり、その殆どが賞味期限がきれていたこともあった。

 

旦那にこぼすと、

「昔の人間だし、食料難を経験してるからつい食べ物を溜め込んじゃうんだよ」

と言っていたが、じゃあ貴様が片付けろやという話である。

 

要は旦那も片付け掃除が出来ない人間だったのだ。

 

そんなこんなで年末は気が重い。

行かなきゃいいじゃんと言われたらそれまでだが、あんな汚い家に大晦日寄ろうとする親戚などいない。だからわたしたちがわざわざ寒い義実家に行き、全く寛げずに衛生を気にしながら蕎麦を食べる羽目になるのだ。

 

便器を磨きながら、この家一度燃やした方が早いんじゃないかなとわりと本気で思った。

(近所迷惑になるからボツ)

 

穴を掘りながら、使ってない大量の汚い食器はいつか一つ残らず割ってやろうと決意した。

 

いつか、絶対。

 

 

 

 

 

 

 

元プロ野球選手の人が講演会に来た

中3の時、どういったいきさつかはわからないが、元プロ野球選手のNさんがうちの学校に講演会に来た。今から30年近く前の話である。

夏服ではなかったので多分、夏休み前だったと思われる。

 

わたしは今も昔も色々なことに興味がなく、芸能人や音楽やましてやスポーツなどよく知らなかったし知ろうともしなかった。

(ただいつもテレビがついているうちだったので最低限のニュースやバラエティは見ていたが。最低限て何?)

 

だから、今度Nさんが学校に来るぜ!とどよめいていたクラスメイト達を横目にNさん…?そんなに人気者なのかな?と思っていた。

 

講演会は学校からほど近い体育館で行われた。

田舎の中学にNさんのようなスターが来てくれるなんて!と生徒たちもだが先生たちもウキウキを隠そうとしなかった。

(学校一若くて可愛い先生が、見たことないピンクのスーツに同じ色のリップを合わせていて、それを見たチャラい系の男の先生に「若いのは服だけだよな!」といじられマジで拗ねていたのを覚えている)

 

パイプ椅子に座った300人程の生徒達がわっ、と歓声をあげると、後ろからニコニコしながらNさんがやってきた。

 

「Nさんてあの人か〜!テレビで見たことあるわ〜!」

その時点でやっとわたしはNさんの顔と名前が一致した(けど、Nさんの経歴について詳しいことはわかっていなかったし今もよく知らない)

 

今となっては内容こそ良く覚えていないが、色々な苦労や経験をしてきたNさんの話は面白く、いわゆるヤンキーも今で言う隠キャの子たちもNさんの話に耳を傾けていた。

 

そんな中。だいたいのことを語り尽くしたNさんが、

「じゃあ、何か質問がある人〜!」

と突然の質疑応答タイムを始めた。

 

(こういうのって、大人になってからも往々にあるけど、すんなり質問する人ってあんまりいない気がする、そう思うのはわたしだけなんだろうか)

 

ましてや田舎の中学生相手が、元プロ野球選手のNさんに個人的に話しかけるなんて…

 

ざわつくだけで誰も質問しようとしない魔の時間が過ぎて行く。

 

その間を埋めようとしたNさんがこう言った。

「じゃあ、逆指名しようかな…3年1組、出席番号1番の人!」

 

一気に盛り上がる(どよめく)会場。

だが、逆指名された3年1組1番の子はえっ?え〜っ?!と困っているだけで、何も言えない(そりゃそうだろう…)。

 

先程とは比べようがないほどどよめき、凍りついた時間が過ぎて行く。

 

あの子かわいそうにな〜とか思いながらNさんを見ると、

「困ったな〜困ったから水飲んじゃおうかな」と今まで口をつけなかった壇上の水を飲み始めた。

 

結局、3年1組1番の子は何も言えず、もういいよ、と言われて座ったが、そのあと

「じゃ、他に質問ある人〜」

とNさんがまた言い出した。

 

…いや。ねえだろ…

 

またさっきと同じ凍りついた時間が過ぎるのかと思うとなんかこうムズムズしてきた。

 

ざわざわしている中、わたしは思い切って手を挙げた。

 

「はい!そこの女子〜」

 

Nさんがすぐにわたしを呼んでくれた。

 

覚えてないけど、えっ、だかわっ、だかの声が聞こえた気がする。質問するべく、わたしが立ち上がろうとしたその時、

 

「江口!お前、去年Nさんが〇〇海岸に遊びにきてたの本当ですか?って聞けよ〜!」

 

小声で同じ列に並んで座っていたヤンキーグループ(?)の奴らがニヤニヤしながらヒソヒソ声で言ってきた。

 

奴らは普通に話す友だちだけど、いつもわたしのこといじっていて(いじめられてはいない)、下に見られてんだろうな、と常々思っていた。

 

一瞬、頭に血が上った。

 

あ?

聞きたいことがあればてめえが手を挙げて質問しろよ。

貴様らの言いなりにこのあたしがなるとでも思ってんのか?

あとそれ超絶つまんねーから。地元の海にNさんが来たからって何なんだよ?内輪ネタで盛り上がるのなんておまえら4人くらいだから。

このズベ公共が。

 

言葉にはせず、一瞬そいつらを睨むと、驚くほど冷静になれた。

 

「3年4組の江口です。

わたしは今バスケ部に入っていますが、練習がキツすぎて辞めたいと思ったことが何度もあります。

Nさんは野球をやめようと思ったことはありますか?」

 

うって変わってざわめきはなくなり(聞こえなかっただけかもしれない)、会場のみんなが聞いてくれているように思えた。

 

Nさんは質問に丁寧に答えてくれた。

 

自分は野球が大好きなこと。

辞めようと思ったことは一度もないこと。

でも、色々な理由で(怪我や経済的なことで)辞めるしかないかもしれない窮地にたったことはあること。

 

だけど、そこで辞めたら絶対に後悔すると思っていたから辞めなかったこと。

 

そして最後にNさんはこう言った。

 

「だから江口さんもバスケ部は辞めない方がいいよ。きっと後悔すると思う」

 

私がお礼を言うと、拍手が聞こえた。

 

わたしはヤンキーグループの方はあえて見ないようにして椅子に座った。

 

 

「他に質問ある人〜」

 

まだやんのかよ?!とちょっとびっくりしたが、ちょっと間が空いてから生徒会長だったカジ(前記事参照)が手を挙げ、「Nさんはどんなお友達がいますか」と、なんかもっとあるだろう、みたいな質問をするのを、それに「うーん、友達かあ〜」とちょっと困ってから、ユーモアを交えながら答えていたNさんを見ていたら、時間が来たらしく、講演会はおしまいになった。

 

あの後、言うことに従わなかったわたしになんか言ってくるかと思ったヤンキーグループは何も言ってこなかったし、学校一厳しかったバスケ部の顧問に辞めたいと分かったらやべーかなとか思ってたけどそれも特に何もなかった(バスケ部にわたしはいてもいなくても変わらない存在だったし)。

 

カジに至っては正直勝ったとすら思えた。

生徒会長のプライドだかなんだか知らないけど、私の二番煎じでももうちょい良い質問したら?ってね。

 

 

もう誰も覚えてないであろう、あの時の記憶ではあるが、デブで天パでかわいくなく、優秀でもなく、いじられキャラでも何とかここまでやって来れたのは、あの時の会場の空気を変えることができたというささやかな自信が支えになっていたのである。

 

(Nさんを良く知らないのに質問するのも失礼だった気もするが)

 

 

その後の人生で研修会などで同じような場面に出くわしたことが何度かあるが、その度になるべく早めに質問をしてあの空気にならないようにしていたが、就職した職場の後輩から

「江口さん、研修中爆睡してたのに、よく質問することありましたね」と言われ、引きつり笑いしか出なかった。

 

所詮わたしはその程度の奴なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢の中でならあんなに強気になれるのに

大学時代仲が良かった友達2人に嫌な態度を取られた。

声を掛けたけど、あからさまに無視。それどころか耳打ちをし合っている。

 

「なにその態度。感じ悪いんだけど」

悲しみより怒りが湧いてきたわたしは、即座に言った。

 

「…だってえぐちゃん、いつもルーズだから…」

「それは直接理由にならないよね?」

食い気味に言い放つわたしに、2人は黙ったままだった。

 

合宿に向かうバスの中、わたしは踵を返し、2人から離れ1人で座った。

 

かっこ悪。こいつらまるで小学生じゃん。

こんなに嫌な思いをするなら、わたしは1人でいいわ。

 

そこに後に絶交してしまう友人、とにちゃんがいくらか気を遣ったような笑顔で話しかけてきたのを、不思議な気持ちで見ていた。

 

 

そんな夢。

 

現実のわたしときたら、顔や態度に出てしまうけれど、咄嗟に言いたいことを言えないただのチキンである。

 

夢の中ではまるで台本があるかのように言葉が口をついて出てきた。

 

わたしはそうなりたいのかもしれない、

でもなれないことはもうずっと昔からわかっていて、諦めている。

 

 

藤堂

新卒で入った職場で働いて7〜8年後。わたしの卒業した大学の後輩にあたる男性が入社してきた。それが藤堂であった。

もちろん年が離れていてわたしはそいつを知らなかったのだが、高身長でルックスは悪くはなかった。が、なんというか、あまり冴えない印象ではあった。

いわゆる無名大学なので、決して頭の良い人材ではなさそうだったし、なによりコネ入社だったので皆はっきり言って期待はしていなかった。(ちなみにこいつの父親は経営者であった)

 

入社前の研修(のようなもの)に「卒業旅行から昨日帰宅して体調崩したから今日は行けません」と言って上司を就職前から呆れさせていたらしい。

 

仕事が始まると、案の定そいつは全く仕事が出来ないくせに口だけはたつので、仕事以外の人間関係はまあまあ良かったように見えた。

だが、一緒に組んで仕事をしていた女性からは早い段階で嫌われていた。

周りで見ている分には調子のいい奴だけで済む所だが、直接業務に関わると言われたことを満足に出来ないわ言い訳するわで大変だったらしい。

 

一度仕事のあと、同期の子と一緒に入ったファミレスでこいつと会い、3人で食事をすることになったことがあった(藤堂はその時一人で来ていた)。 

そいつの話は面白く、普通に生活しててなんでこいつのまわりにこんな面白い奴か集まるんだよと思うような話を沢山聞き、同期の子と爆笑しながら2時間くらい楽しい時間を過ごした。

 

しかしそいつの話の殆どが2ちゃんねるのパクリだったと数年後に知りゾッとした。

今から15年近く前の話、当然スマホなど無くPCが自由に使える環境でなければ2ちゃんなど身近な存在ではなかったのだ(わたしのいた環境では特に)。

だってあたかも自分のことのように話すんだよ?2ちゃんネタを。怖

 

だがそれを知る前は、別に藤堂のことを悪く思ってはいなかった。仕事が出来ない人の気持ちはわたしもよくわかっていたからかもしれない。

 

そんなある日。

先輩方が、今日今から飲みに行くけどどう?と誘ってくれて、平日だったが女性ばかり10人近くで飲みに行くことになった。

割合でいうと、わたしの一個上の先輩が3人、2個上が一人、同期が3人、わたしの一個下が2人とかだったと思う。

そこに誰かが声をかけたのか、藤堂も来ることになった。

 

紅一点ならぬ黒一点の藤堂はここぞとばかりに面白トークを披露し飲み会を盛り上げていた。

綺麗どころに囲まれて(わたし以外)、かなり調子に乗っていたんだろう。

 

わたしも含めみんなそれなりに楽しんでいたのだが、しばらくして一個上の先輩(実は職場のボスの娘)と藤堂がなにやらイチャつき始めていたのを目撃した。というか、結構堂々とイチャついていた。

「これ藤堂がくれたんだよね〜」

と甘えた声で小さなメモを見せてくる先輩を「ちょっと恥ずかしいじゃないですかぁ〜」と言いつつニヤニヤしながら見守る藤堂。

 

そのメモには

「〇〇(先輩の名前)、お疲れ様!今日も一日、笑顔で頑張ってたね。ずっと見てたよ!でも無理だけはしないでね。僕も〇〇の笑顔を見て癒されてるんだからさ!」

みたいなことが書いてあった。

 

わたしはドン引きした。

 

藤堂とボスの娘である先輩は8歳違う(もちろん藤堂が下)。親が同業の経営者ということもあり、うまくいけばまあめでたい話ではあるんだろうけど、それにはあまりにも藤堂がポンコツすぎる(ボス娘は美人で仕事はできるタイプだったのだ)。

 

わたしが例のごとく無言のまま感情の全てを表情に流出し続けていると、「江口さん〜これ冗談ですからね〜」とやはりニヤニヤしながら突っ込んできた藤堂。「でもこれ、冗談でも捨てられな〜い」と言う先輩…

 

なんだこの状況。

ほほう、さてはわたしをプレイの一部にしてやがるな?

イチャついてるところを見せつけて盛り上がってるんだよな?あ?どうなんだよテメェ。

 

と心の中で悪態をつきつつ、飲み会はお開きになった。

 

 

帰宅してしばらくすると、何故か藤堂から電話があった。

「江口さん、本当に下らないことなんですけど」

いつになく真剣な話ぶりだった。

「さきほどの飲み会の会計。三千円足りなかったんです」

「本当に下らないことなんですけどね」

「すごい小さいことなんですが」

 

結局、その三千円はわたしが後日補てんした。

(当時職場ではマイナーな存在だった、一人暮らしをしていたわたしが、である)

 

テメェの彼女に言えよ。

 

今でもそう言わなかったことを後悔している。

 

 

ちなみに先輩と藤堂はどうやら短い付き合いだったようで、先輩は奴とのことを完全に無かったものとして別の方と結婚し幸せな家庭を築いている。

 

藤堂は…

 

知らん。